ジョニー・ピーコックそして世界のパラリンピアンたち、ようこそ東京へ。

ジョニー・ピーコックというイギリスの選手をご存知ですか? 彼は19歳のとき、ロンドン・パラリンピックの100m競技(T44)で金メダルを獲得し、一躍パラリンピック界のスターになりました。4年後2016年のリオでも金メダルを獲得し、今回、東京パラリンピックで3度目の金メダルを目指します。100m(T64)と4x100mのユニバーサルリレーに出場する予定です。

1993年ケンブリッジで生まれたジョニーは、5歳のときに髄膜炎にかかり、右足の膝下を切断しなければなりませんでした。スポーツ好きだったという彼は、2008年の北京パラリンピックにインスパイアされて、すぐにイギリスパラリンピック協会の才能識別プログラムに参加します。そして、2012年のロンドン・パラリンピックの100mで金メダルを獲得することに。その夜、スタジアムには8万人の観客が集まっていました。ジョニーは南アフリカのパイオニアであるオスカー・プレトリウスを含む世界最高のアスリートたちを後ろに、叫び声を上げました。それはもう、圧巻としか言いようのない光景でした。

ジョニーは見た目もクールでカリスマ性のある人なので、BBC Oneの人気セレブダンスショー「StrictlyCome Dancing」をはじめ、数多くのテレビ番組に出演しています。Netflixのドキュメンタリー映画「ライジングフェニックス」でもアスリートのひとりとして取り上げられています。 Netflixにアクセスできる方は、ぜひご覧になってみてください。

私はちょうど、彼がイギリスのチャンネル4のために作ったショー「ジョニーのブレードキャンプ」を見たところです。このプログラムの主役は、彼と同じように足を失った5人の子どもたち。「ブレード」と呼ばれる炭素繊維義肢をつけて一緒に走るのを目指します。イギリス国民保険サービス(NHS)がこの義足「ブレード」を子たちに無償提供することを決めたのは、2012年のロンドン・パラリンピックでの彼の功績とも言われます。子どもたちがブレードを自在に使いこなすスキルを身につけ、自信をもってもらうことが、ジョニーの1年にわたるこのトレーニングプログラムの意図でした。

子どもたちは、それぞれに自分の目標を設定します。ちょっと生意気な8歳のハーベイはハードル種目を、12歳のメイズは学校で友だちとネットボールをしたいと思っていました。同じく12歳のトーマスは、40分以内に5Km走るのを目指しました。14歳のオリビアには途中で止まらずに400mを走り抜きたいという目標が、15歳のミッチェルには仲間とサッカーしたいという目標がありました。子どもたちはみんな自分のブレードを自信をもって使いこなし、友だちや家族と一緒に暮らしを楽しみたいというシンプルな希望を持っていました。

残念ながら新型コロナウイルスのために、トレーニングプログラムは大幅に中断されましたが、ジョニーや他のアスリートたち、また専門家たちの指導によって、子どもたちはブレードの使い方をマスターし、自分の目的を叶えるためにどう身体をトレーニングすればいいのかをしっかり学んでいきました。とくに私は、14歳のオリビアの変わりように感動しました。それまで自分の身体に当惑していた彼女でしたが、キャンプ後、彼女はジーンズをロールアップして、公共の場でも堂々と自分の義足を披露するようになりました。うかつにも私は泣いてしまいました。

障がいを持たない人が、障がいを持つ人について語るのは難しいですが、この東京パラリンピックでもきっと、すばらしいアスリートたちの活躍が見られるのではないかと楽しみにしています。そしてこの機会が、どんな人にとっても暮らしやすい社会を実現するための足がかりになればと願っています。

ジョニーが出場する100m(T64)のレースは、 8月29日(日)の夜に予選、8月30日(月)の20:43に決勝戦がおこなわれます。

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