イギリスの小さな海辺の隠れ家

最近、イギリスに帰ったときの写真を眺めていたら、デヴォン州の南海岸にあるBeerという小さな海岸沿いの漁村で過ごしたときの写真をみつけました。2015年に撮ったものです。そして、今年になってまだ海で泳いでいないことに気づいてしまいました。私は海とビーチが大好きなので、これは大問題!そこで、さっそく友人と一緒に南伊豆への小旅行を計画し、2日間たっぷり泳いで、年末の忙しい時期の前にバッテリーチャージをしてきました。私にとって、海と波は大きな癒やし。生活の一部として、どうしても必要なものなのです。

Photo credit: James Maloney

「ビール」は、イギリス初の世界遺産であるジュラシック・コースト、ユネスコ世界遺産のライム・ベイに位置する美しい小さな漁村です。白亜の崖に囲まれたこの村は、まるで世界から隠されているかのよう。このデヴォン州沿岸の小さな村の名前が、実はアルコール飲料ではなく、森や木立を意味する古英語の「beare」または「bearu」に由来すると知ったら、がっかりするかもしれませんね。

漁師のためともいえるこのビーチには、小さな漁船が操業しています。港ではないので、漁師たちが色鮮やかな船を海岸線まで引いたり押したりしていて、毎日がとても活気に満ちています。この海域で獲れる魚の種類は驚くほど多く、イギリスのシーフードの最高峰です。ここで獲れた魚介類は、ビーチのフィッシュ・シャックで購入できます。このリストご覧ください。

1970年代のまだ若かりし頃、日帰りで、このビールを訪れたことをとても懐かしく思い出します。兄と私は、夏休みの何週間かをデヴォン州の中央部にある酪農場の祖父母と叔父の家で過ごしましたが、ビールへの旅はいつも圧巻でした。美しいデヴォンの田園地帯の細い道を抜けて、車で1時間ほどかけて行くのです。午前中は漁船に乗って、手釣りでサバなどをとりました。魚はつねにたくさんいて、いつもバケツいっぱいに釣れました。ビーチに戻って、新鮮なサバをその場で焼いて、ときには漁師小屋から新鮮なカニを買って料理しました。シンプルですが、とても贅沢な体験だったと思います。

これが、私にとってのビールの美しさであり、シンプルな魅力です。イギリス人が海辺で過ごす休暇の歴史は長く、始まったのは1700年代です。その頃はもちろんリッチな人たちに限った話で、彼らの多くは海岸沿いの町にセカンドハウスを持っていました。イギリスの素晴らしい海辺の休日が誰にでも手に入るようになったのは、1950年代から1960年代です。1938年に制定されたホリデーペイ法により、有給休暇を利用して多くの人が休暇を取れるようになりましたが、行き先は住む場所によって大きく異なりました。例えば北部の人たちは、工場地帯であるマンチェスター、リバプール。グラスゴーの人たちは、ブラックプールやモレッカンブなどの海辺の町へ。リーズの人たちはスカボローやフィリーなどへ行ったでしょう。リーズの人たちは、スカボローやフィリー。ロンドンの人はブライトンやマーゲートを選んでいたかもしれません。こうして、海辺の町はいずれも、ホテルやカフェ、アミューズメント施設、遊園地などで栄えることなります。

Blackpool Beach, 1960s

ビールは、人口密度の高い工業地帯からはとても遠かったため、道路が整備される前は、車で約1日、電車やバスを使えばさらに時間がかかる場所でした。そのため、ビールにやって来るのは主に地元の人たちで、ほとんどが日帰りの観光客ばかりでした。そんなわけでホテルはもあまりなく、アミューズメント施設や遊園地もありませんでした。フィッシュ&チップスの店や、デヴォンのアイスクリーム、有名なクロテッド・クリーム・ファッジなどの地元のお菓子やお土産屋さんなどが並ぶくらいですが、心地よいパブももちろんあって、一日を楽しむためには充分な魅力が揃っています。

そしてビールは、今でも伝統的で控えめな観光地として残っています。2015年に訪れたときには、ビーチにはまだ簡素な木製のビーチハットが並び、デッキチェアが貸し出されているのを見て、とても嬉しくなりました。この写真は私が撮ったものですが、もしかしたら50年前から変わっていないかもしれないと思うような、魅力的な光景です。

ビーチハットとは、人気のある海水浴場に設置される小屋のようなもので、通常はカラフルな木製です。一般的には、日差しや風を避けたり、着替え場所や持ち物の保管場所として使われます。ビーチハットの中には、簡易のコンロセットなど、食べ物や温かい飲み物を作るための簡単な設備が揃っているものもあります。ただ、ビールのビーチにあるビーチハットの敷地は、地元の地主が所有しているようで、借りるのには4年〜6年待ちだそうです。自分で小屋を建てなければなりませんし、おそらく色や大きさにも規則がありそうですね。基本、電気はなく、水は共同で使用します。とはいえ、とてもベーシックで、素敵だと思います。

レンタル料は年間約800ポンド(約12万円)から。

あるいは、地元の企業から1日約10ポンド、または1週間55ポンドで借りれるようです。

イギリスの海辺での休日は、とにかく最高です。

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