イギリスのクリスマス British Christmas

日本でもクリスマスは一大イベントですが、イギリスでももちろん大イベント♪ もうご存じの内容もあるかもしれませんが、今月はあらためて、イギリス人が過ごすふだんのクリスマスの様子をご紹介したいと思います。

最初はクリスマスソングから

クリスマスへ向けての第一歩は、やはり音楽です。ラジオでは11月も半ばを過ぎるとクリスマスソングがかかりはじめ、最後はクリスマス音楽一色になります。

日本でも街中でクリスマスソングがかかるようになりますが、クリスマス間近になると本当に「クリスマスソングだけ」しか流れなくなるのがイギリスの特徴かもしれません。スワン&ライオンの店舗でも12月に入るとクリスマスソングを流します。はじめはとってもワクワクするのですが、クリスマスになる頃にはちょっと飽きてしまうんです(笑)。それでもやっぱり、クリスマスソングは欠かせませんよね。

毎年新しいクリスマスソングが作曲されているはずですが、ポピュラーな曲は同じです。イギリスでいちばんよく流れる曲は、おそらく1970年代のグラムロックバンドSLADEの“Merry Christmas Everybody”でしょう。あとはお馴染のWHAM!の“Last Christmas” 、マライア・キャリーの“All I Want For Christmas Is You(恋人たちのクリスマス)”。そしてPOGUES(ポーグス) の“Fairytales Of New York”。

ポーグスの他の曲は知らないけれど、このクリスマスソングには聞き覚えがあるという方もいらっしゃると思います。また、いつもの楽曲スタイルともだいぶ違う場合が多いのもクリスマスソングならでは。とにもかくにも、毎年クリスマスの時期には膨大な印税が得られるとも言われています。その額は40万ドル以上だとか。すごいですね。

さて、12月に入ると始まるのが、教会でのクリスマスキャロルコンサート。なかでも有名なのは、ケンブリッジのキングス・カレッジ・チャペルで24日におこなわれるコンサートです。ふだんは教会から遠のいている人たちも、この時期ばかりは教会に足を運んでクリスマス気分を楽しみます。ラジオから流れてくる教会のコンサートを聞きながら、プレゼントをラッピングしたり、スイーツや食事の用意をしたりとクリスマス準備にいそしむのも、イギリス家庭の恒例行事です。

イベントが盛りだくさん

12月に入ると家族でそろって見に行くのが、去年ご紹介したパントマイム。https://www.swanandlion.com/pantomime-japanese/

私が子どもの頃は、クリスマスのイルミネーションの点灯式を見に行ったりもしました。今でもライトアップされた名所には、多くの人が集まるようです。有名なのはオックスフォード通りのイルミネーション。トラファルガー広場(Trafalgar Square)のクリスマスツリーも人気です。近年では自宅をライトアップする家庭も増えているので、住宅街にも名所ができているかもしれませんね。

幼稚園や小学校ではこの時期、イエスの誕生物語を劇にした「ナティビティ・プレイ(Nativity Play)」がおこなわれます。この学校行事を終えたら、クリスマス休暇に入ります。子どもたちはもちろん、街全体がクリスマスに向けてワクワクしているのがイギリスの12月です。ひとつだけ、私が子どもの頃にあって今なくなってしまいそうな伝統がクリスマスカード。私の母は今でも毎年クリスマスカードを送ってくれますが、最近では一度もカードを書いたことがないというイギリス人もいるそうです。簡単につながれるさまざまなツールがあるので仕方ないですが、やはり残念でもあります。

オフィスでももちろんパーティーが開催されます。とくに時期は決まっていませんが、クリスマス休暇に入る前に、みんなでワイワイ騒ぎます……というより、いわゆる“ばか騒ぎ”をするんです。週明けに出社して顔を合わせるのがちょっと恥ずかしくなるくらいに(笑)。あと、忘れてはいけないのがクリスマスジャンパース。けっしてクールとは言えない装いですが、クリスマス休暇の前にオフィスで着たりするのも、イギリスではお馴染です。

クリスマス準備のメインはラッピング!?

12月に入ると、家のなかにもクリスマスのオブジェが並びはじめます。もちろんクリスマスツリーもお目見え。イギリスでは今でも本物のモミの木を使う人が多いと思います。毎年買い足しているオーナメントを丁寧に飾り付けていきます。イギリスの伝統的なクリスマスデコレーションについては、以前のブログ https://www.swanandlion.com/british-xmasdecorations-japanese/ をぜひお読みになってみてください。そして、何といっても大変なのがプレゼントのラッピング。イギリスには日本のようなラッピングサービスがないため、すべて自分たちでラッピングしなくてはなりません。クリスマス用にと少しずつ買い溜めておいたプレゼントをひとつずつ包んでいきます。プレゼントにも種類があって、本気モードのプレゼントもあれば、チョコレートやキャンディなどの小さなギフトもあります。すべてのプレゼントに「to XXX(○○へ)」と書いた小さな宛名タグを付けて、24日の夜にツリーの下に山積みにします。

子どもたち用に用意された大きなソックス(Christmas stocking)には、サンタからの小さなギフトが入っています。特別なものである必要はなく、私が幼い頃は果物やチョコレートなどが入っていました。それでもものすごくウキウキワクワクするのがクリスマス。パパへのプレゼントはネクタイか靴下、ママへは石鹸かキャンドルというのが王道です。これはどこの国もさほど変わらないかもしれませんね。プレゼントが好みでなかった場合にあとで交換できるように、レシートは取っておいたほうがいいなんてことも言われたり言われなかったり(笑)。

クリスマス当日は朝からお祝い

クリスマスの時期が近づくと、「今年はどの家で祝うか」を決めます。日本の元旦と似ているかもしれませんね。ホストファミリー宅には、24日の午後から家族がプレゼントとお泊りセットを持って集まってきます。日本ではクリスマスイブがとても特別な日になっていますが、イギリスではそうした特別な雰囲気はあまりありません。イブに食べる決まったメニューみたいなものも、とくにないんです。若い世代はパブに出かけたりしますが、子どものいる家庭ではクリスマス本番に向けて大忙しなのがこの日。25日当日は、パブとガソリンスタンド以外ほぼすべてのお店が閉まってしまうため、クリスマスプレゼントや食料品を駆け込みで買う人向けに、24日はいつもより遅くまでオープンしているお店もあります。

そして、いよいよクリスマス当日。朝は起きたら、軽くシャンパンとスモークサーモンなどで朝食をとります。タイミングはそれぞれの家庭で違うと思いますが、わが家の場合は、朝食を軽く食べたあと、プレゼントを全員で一緒にあけていきます。

そのあとメインのクリスマスランチにむけて、ターキーやなどをローストしたりとビッグランチの準備にとりかかります。ランチの内容は、スターター(前菜)、ローストターキー(もしくはローストビーフ、ローストポーク、ローストグースなどご家庭によりけり)、クリスマスプディング、ミンスパイ、チーズ、そしてワイン……などなど。家族全員で2〜3時間かけてたらふく食べます。もちろんクリスマス音楽とともに。

たいがいは15時ぐらいにクリスマスランチが終わり、あとはフリータイム。この時期のイギリスはもう日が暮れはじめていますから、少しお散歩に出かけて帰ってきたら、自宅でゆっくり過します。夕食は基本なしで、チョコレートやミンスパイ、あるいはフレッシュデーツを紅茶と一緒につまんだりして過ごします。クリスマスの定番チョコは「クオリティストリートチョコレート。家族それぞれにお気に入りの味があるんです。

イギリス人はテレビが好き

つまみながら観るものといえば、テレビ。テレビはイギリス人にとって、クリスマス時期にはとても大事な存在なんです。そのおかげで『RADIO TIMES』という雑誌(日本でいう『TVガイド』みたいなもの)も健在。クリスマス時期になると売り上げがぐんと上がるのだそう。私の母も優良読者のひとりです。TVプログラムにはクリスマススペシャルが盛りだくさんなので、当日に何を観るかプランを練る必要があるほど。それくらいイギリス人はたくさんテレビを観るんです。

クリスマス当日は、マリリン・モンローやケリー・グラント、エルビス・プレスリーなどの古いクラシック映画の放送も充実しています。子どもたちはクリスマスにこうした映画を観ることで、世代を超えた文化の価値に触れる体験をするんです。私がはじめてマリリン・モンローを知ったのも、クリスマスでした。近年イギリス人がクリスマス当日に観る人気の映画は、『It’ s a wonderful life』(1946年)、『ホームアローン』(1990年)、『スノーマン』(1982年)の3つ。この3作品は毎年かかさず放映されています。

クリスマス時期のテレビでもうひとつ見逃せないのが、テレビのCM。有名なのは、ジョンルイス(デパート)のクリスマスCMです。クリスマスにしか観られない、予算をたっぷり使った特別なCMも楽しみのひとつになっています。ドイツ生まれのスーパーアルディ(ALDI)のクリスマスCMも人気。可愛らしいぬいぐるみキャラクターの「ニンジンのケビン(Kevin the Carot)」が面白おかしく大活躍するCMで、年々予算も増えているそうで、シリーズ化されるほどの人気です。これにならって、他のスーパーチェーンもクリスマスCMを制作するようになっています。

John Lewis department store TVC – 2022
Kevin The Carrot – Aldi supermarket TVC 2023 (inspired by Charlie & The Chocolate Factory)
Barbour 2023

そして、もちろんクリスマス当日の15時きっかりに始まるのがクイーンならぬキングのスピーチです。ただ、調べたところによると、どうやらライブで観ているのは国民の約10%ほどのよう。それでも充分ですね。子どもの頃に「他のチャンネルが観たいな〜」と思いながら観ていたのを思い出しました(笑)。

26日のお楽しみ

クリスマスの翌日にやってくるのがボクシングデー(Boxing Day)。個人的には、26日のこのボクシングデーがクリスマスのなかの一番のお楽しみで、大好きなんです。冷蔵庫はもちろん、家中が食べ物でいっぱいになるのですから、もう最高です! 26日からは、ボクシングデーセールといって、年に一度のビッグセール期間も始まります。ですから、クリスマスギフトでもらった現金(お年玉みたいですね)を手に、子どもたちはセールにお買い物に出かけたりするのもお馴染です。

Wishing everyone a very Merry Christmas from the Swan & Lion team…

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